人の移動を円滑にする鉄道、バス、タクシー、旅客船、航空などの公共交通インフラは大変な困難に直面しています。3月7日の参議院予算委員会で岸田総理、斉藤国交相に国としての対応を質問しました。
阿達雅志君
コロナ禍、人口減少、高齢化の下で、鉄道、バス、タクシー、航空、内航旅客船舶などの公共交通の在り方が根本的に問われています。コロナ感染が減ってもリモートワークや生活様式の変化で人流は戻らず、また加えて、ウクライナ情勢も含めた燃料価格高騰で公共交通の維持は困難を極めています。
公共交通と言いながら事業主体は民間、民間と言いつつ運賃は公共料金として上限が設定されており、路線の改廃も自由に行えません。経営の効率化や内部補助で対応するのには限界が来ています
公共交通の今後の在り方について、総理の御所見をお聞かせください。
内閣総理大臣(岸田文雄君)
地域の公共交通は地域住民の生活や経済活動を支える不可欠なサービスであり、デジタル田園都市国家構想を推進し、地方の活性化を図っていく上で重要な社会基盤であります。
委員御指摘のように、我が国においては多くの場合、民間事業者が公共交通の運営を担っていますが、少子高齢化による運送需要の減少に加え、新型コロナウイルスの影響により、公共交通を担う民間事業者の経営環境、非常に厳しい状況に置かれています。今後、ウクライナの情勢を受けて、エネルギー等の価格の高騰等も指摘をされるところです。このため、国としてもこれまでにない手厚い支援を行っているほか、自治体においても地域の事情に応じた支援を行っております。
今後とも、地域の公共交通の維持確保を図るべく、民間と国や自治体との役割分担の観念も、観点も踏まえ、民間の創意工夫や地元の主体的な取組を生かしつつ、しっかりと国としても支援を行っていきたいと考えます。
阿達雅志君 ありがとうございます。
総理のデジタル田園都市構想の重要な社会基盤として公共交通を位置付けていただいたこと、本当にありがとうございます。やはり、この公共交通のところをこれから、単にこれ国が決めていくだけではなくて、民間あるいはこの事業者を含めてしっかりと、何が一番最適なのか、地域にとっていいのかを考えていく、そういう場を是非つくっていっていただきたいというふうに思います。
また、具体的に今の対応ということになると、適正運賃と適正利潤を実現するための公共交通の運賃見直しの議論が出てくると思います。国土交通大臣の御所見をお伺いします。
国務大臣(斉藤鉄夫君)
今、阿達委員御指摘のように、適正な運賃ということの設定、それをみんなでどう支えていくかということが非常に重要だと思います。
利用者ニーズに即した、そして運輸事業を取り巻く大きな事業環境の変化に対応したより良いサービスを持続的に提供する運賃・料金体系をどのように設定するかということで今検討しております。バスにつきましては、昨年末に人材確保や労働環境改善の観点から人件費の算定方法の見直しを行ったところでございます。また、鉄道につきましては、今後の運賃・料金制度がどうあるべきか交通政策審議会の方で今検討し、夏までに大まかな方向性を打ち出したいと考えております。
いずれにしましても、この地域で、我々国、事業者、地方自治体、どう支えていくかということを、この運賃・料金体制も含めてしっかり検討していきたいと思います。
令和4年3月7日
参議院予算委員会 質疑より
私の問題意識はこの質問の通りです。新型コロナウィルスの感染拡大で大打撃を受けた業界への支援として菅政権では資金繰り支援に注力してきましたが、その先が必要です。岸田総理の答弁は、正しく現状を認識頂いていますが、「これまでにない手厚い支援を行なっている」ともう一歩踏み込めていません。しっかり具体策に切り込んでいきます。
公共交通は、国民の生活や経済活動を支える不可欠なサービスです。高齢化で公共交通のニーズは高まっていますが、公共交通のビジネスモデルは限界を迎えつつあります。人流が減って今まで鉄道路線の厳しい収支を内部補助で支えてきた鉄道付随のホテル、小売、飲食、バス、タクシーなど様々な事業も大打撃を受けています。利益をあげてきた新幹線や都市圏在来線も赤字となってしまい内部補助どころではありません。累積債務問題を含め傷んだ業界への支援をしっかり行い、人材を確保し、スマート・シティーやMaaSの取組みによって地域公共交通をリ・デザインしていくことが必要です。また燃費高騰に対してもしっかりと対策を取り、必要な価格転嫁が可能になるようにしなければいけません。
新型コロナウィルスの感染が拡大する中で、「移動すること」自体が高いリスクだという見方が広まり、公共交通に対する不安や忌避感を生んでいます。データや科学的知見によって、公共交通を安心して利用できることについての国民に訴えていきます。また、国、自治体、事業者の役割分担を見直し公共交通が抱える課題の具体的解決にスピード感を持って取り組んでいきます。