国と民間がしっかり組んで長期的に取り組んでいくことが必要です。
政府は、2010年に10兆円であったインフラシステム輸出を2020年には30兆円にするという目標を目指し様々な施策を推進しています。
世界のインフラ市場が拡大する一方で、中国・韓国等の競合企業との熾烈な争いを勝ち抜くことが必要です。
また、アジアについては日本政府はADBと連携して、5年間で1100億ドルの質の高いインフラパートナーズを通じてインフラ投資を実現していくこととしました。
日本の鉄道インフラ輸出は日本の総合商社も長年、取り組んできましたが、残念ながら、成果は限られたものでした。
これから、政府の計画に従って、拡大行くためのポテンシャルは十分ありますが、相当の工夫をしなければ実現は難しいと思います。
国の支援の下、鉄道関連業界の英知を結集していく必要があります。
アジア諸国のこれらの成長のためには、道路、橋梁、港湾、空港建設とともに、鉄道建設が重要です。
鉄道は都市と都市を最短距離で結び、人や物を運ぶことが出来る極めて効率性の高い交通機関です。
CO2削減という観点からも、鉄道は自動車よりはるかに優れています。
日本の鉄道システムは世界でもトップクラスです。
新幹線システムの安全性、正確性、そして運転頻度の高さは群を抜いています。
鉄道車輌の製造だけを見ると、中国は日本やドイツ、カナダから技術導入した高速鉄道技術を使って猛追しています。日本の新幹線メーカー5社は50年で10,000両の新幹線車輌を製造しました。
これに対して、中国の北車、南車は両者併せて1年間で5,000輌の新幹線車輌製造する能力を持っています。経験期間が短いとは言っても短時間でこれだけ実績を積むと経験値も急速に高まっていると思われます。
しかし、鉄道車輌を含めた鉄道システムとしてみた場合、中国は全く日本の相手にはならないでしょう。
鉄道システムを自ら作ってきた日本の鉄道関係者の長年の努力の賜物と言えます。
日本の鉄道システムは単に目に見える技術だけでなく、安全や精緻さサービスなど目に見えない部分にノウハウが蓄積している。
鉄道建設後も、運行、保守まで含めて、日本の鉄道システムは成り立っています。
しかし、問題は、コストです。
長期的に見ると、日本の鉄道システムは極めて質の高い効率の良いシステムですが、初期費用だけ見ると高いことは否めません。
アジアの多くの市場が必要としている鉄道システムはもう少し、安くて質の低いものかもしれません。
今まで、優秀な日本の鉄道システムが車両などのシステムを除いては世界市場に拡大していかなかったのは、このためです。
また、鉄道車輌メーカーを見ても、世界水準で見ると、日本の車輌メーカーは一社一社の規模が小さいことに特色があります。少量多品種型製造を行ってきたと言えます。
鉄道は公衆交通として、社会政策上、運賃が抑えられているのが普通です。
そのため、快適性を追求した高級品よりも、利便性を満たす安価なものを選びがちです。
安価な大量生産型の方が評価を受ける市場も多いと思われます。
長期的なメンテナンス費用が安いと言っても、実際に、ちゃんとメンテナンスを行うかどうかも国によって違うでしょう。事業性を十分精査せず高級すぎる鉄道を建設すると、完成後に経営を著しく悪化させる原因となります。
日本の鉄道システムの海外輸出を増やすためには、鉄道経営にまで踏み込んで売り込みを行うか、品筆を下げた鉄道輸出もかんがえるか、といった工夫が必要です。
海外へのインフラ輸出では、オール・ジャパンで対応するか、チーム・ジャパンで対応するかという問題があります。
オール・ジャパンの場合、複数の同業者のれんけいがうまくできるかという問題があり、チーム・ジャパンの場合、同業者の問題が残ります。
また、全て日本企業だけでチームを組成した場合競争力のない業種の企業がチームに入ってきます。
ジャパン・イニシアティブのような形で、日本企業はリーダーとなったコンソーシアムでなければ競争力は高まりません。
2015年12月に安倍総理はインドを訪問した機会に、ムンバイーアーマダバード間高速鉄道に日本の新幹線システムが採用されることが決まりました。
柔軟ファイナンスを提供するだけでなく、ソフト・インフラ、人材育成にまで踏み込んだ画期的な合意です。今後の進展に大いに期待できます。
鉄道システムの建設は、食段階から完成まで非常に長い時間がかかります。
また事業主体は相手国の官公庁となる可能性が高い事業です。民間だけでは取れないリスクを多数含んでいます。国と民間がしっかり組んで長期的に取り組んでいくことが必要です。
JOINをこれからどのように活用していくか、課題は山積しています。