あだち |
垣内社長はユニバーサルデザイン(UD)コンサルタントとして、非常に有名ですが、今日、お目にかかって、とても若い方だったので驚きました。 |
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垣内 |
1989年生まれで今年26歳になります。立命館大学在学中に株式会社ミライロを設立しました。まだまだ小さな会社ですが、収益を出すことにこだわり、もっと多くの人を雇用し、さらに大きなビジネスにしたいと考えています。 |
あだち |
ビジネスにこだわると言う姿勢は非常に大事だと思います。私自身も商社に入り主に鉄道ビジネスで世界を駆け回りましたが、政治家となった今、グローバルビジネスの最前線でビジネス感覚を磨いた経験は非常に役に立っていると思います。 |
垣内 |
「バリアフリー」とは読んで字のごとく「バリア(障害)を取り除く」と言う意味ですが、この言葉が使われているのは日本国内だけです。海外ではアクセシビリティやユーザビリティ、ユニバーサルデザインと言う考え方が主流です。文化や言語、国籍、年齢、性別、障害や能力にかかわらず、誰もが利用しやすい施設・製品・サービスのデザインの事です。今後はバリアフリーではなくユニバーサルデザインと言う考え方が主流になるでしょう。 |
あだち |
「バリアバリュー」と言うのは造語だと思うのですが非常に面白い考え方ですね。障害を価値ととらえると言うのはどのような事なのでしょうか? |
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垣内 |
例えば、私のように車いすに乗っている人間の目線の高さは約100センチです。100センチの目線だからこそ、見えることが、気づくことがあります。今まで「障害」として捉えていたことも、自分自身の考え方や周りの人や環境次第で、「強み」や「価値」に置き換えることができます。バリア(障害)をバリュー(価値)に変え、私たちは社会を変革します。 |
あだち |
なるほど。逆転の発想ですね。垣内さんはミライロをNGOやNPOではなく株式会社として立ち上げました。これもひとつの逆転の発想ですね。 |
垣内 |
バリアフリーやユニバーサルデザインと言うと、これまで社会福祉的なイメージがありました。行政や自治体が行うべきこと、ボランティアで行うべきこと……社会的に良いことではありますが、経済性は重視されませんでした。 |
あだち |
なるほど。ビジネスチャンスとして考えると巨大なマーケットですね。かわいそうだから助けてあげる・・・と言う一時的な感情ではなく、ビジネスチャンスととらえるからこそ継続性も出てくると言う事ですね。 |
垣内 |
ユニバーサルデザイン化は、施設や設備などハード面の取り組みだけではなく、対応や情報などソフト面の取り組みも重要だということを多くの方に理解してもらいたいです。手すりやスロープをつければ良いというわけではありません。例えば、車いす利用者がレストランに行くと、ほとんどの場合は椅子をどかしてテーブルに案内されます。しかし、中には車いすを降りて、椅子に移って食事をしたいと考えている人もいます。大切なのは、思い込みでサポートを押し付けるのではなく、選択肢を与えることです。先ほどの例で言うと、「車いすのまま食事をされますか?それとも椅子に移られますか?」と聞いていただきたいのです。 |
あだち |
思い込みと言うかステレオタイプ的な対応と言うのは行政サービスなどでは非常に多く見られる欠点です。例えばある集落が過疎化し、少数の高齢者だけになったとします。乗客が少なくなったバスの路線を残すかどうか?と言う議論になる訳ですが、その議論に欠けているのはユーザ視点での利便性とコストの発想です。例えばバスの路線を残す事より、いつでも電話で呼べば来るタクシー料金を補助した方が良いのではないか?と言う別の選択肢を考える発想です。 |
垣内 |
ユニバーサルデザイン化は、障がい者や高齢者のためにやらなければならないと強制されている発想でコストと考える企業が多いのかもしれません。しかし、先ほど申し上げた巨大なマーケットが今そこにあるわけですから、企業はビジネスチャンスを求めて取り組みを進めることになります。例えば大阪では、JR高槻駅がエレベーター設置などのユニバーサルデザイン化を進めた結果、ベビーカー利用者や高齢者の乗降客が3倍に増え、駅隣接の商業施設などでも約2億円の経済効果があったと言われています。 |
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あだち |
私の実家が高槻なので実感として良く分かります(笑)昔に比べてJR高槻駅はとても賑やかになりましたね。UD化のための投資効果が非常に大きかったのではないかと思います。このような例は数多くあるんでしょうね。 |
垣内 |
そうですね。日本では幸いなことに鉄道や道路など交通インフラは大きく改善されていますし、大企業や官公庁、ショッピングモールなどの大型商業施設などもユニバーサルデザイン化が進んでいます。しかし残念ながら個人経営の店の場合、進みづらいのが現状です。 |
あだち |
UD化する事でビジネスチャンスを拡大できるという考え方は非常に素晴らしいと思います。私自身、高齢の祖母を連れて旅行をした事があるので車いすで旅行する際の難しさはとても良く分かります。その時も全部自分でホテルやお店、一軒一軒に電話をかけて車いすでも大丈夫か、UD化されているかどうかを事前に調べました。このようなお店側の取り組みをUDを必要としている高齢者や障害者に伝える方法ってあるんでしょうか? |
垣内 |
残念ながら、そう言った情報発信の場はまだ無いのが現状です。例えばあるグルメ情報サイトでは、飲食店がユニバーサルデザイン化されているかどうかを、○か×かでしか示していません。ユニバーサルデザイン化と一口に言っても、入口や店内、トイレなど多岐にわたるので、これだけでは利用者は判断ができません。 |
あだち |
なるほど、まだそのレベルですか。個人で経営されている飲食店の場合、店舗のUD化は少し難しいかもしれませんね。 |
垣内 |
そうですね。規模の小さい飲食店の場合、店内のハードを何もかも完璧にユニバーサルデザイン化することは難しいかもしれません。しかし、高齢者や障がい者がいらっしゃった時の対応方法を学ぶことはできます。つまりハートの部分ですね。例えば、店内の段差をすべて無くすことはできなくても、車いすのサポート方法を身につけておけば良いのです。 |
あだち |
なるほど。手すりを付ければ良い、段差をなくせば良いとハード面だけ整えて良しとするのではなく、ソフト面、つまり教育を充実させる事でバランスを取る事が重要ですね。今日は垣内社長とお話しさせていただいていくつかの発見がありました。 |
●「障害者がかわいそうだからUD化をする」と言う考えではなく、UD化はビジネスチャンスを拡大するための投資と言う考えは非常に先進的だ。
●ハード(施設)改修によるUD化ばかり追いかけるのではなくハートの教育が大事と言う事はとても共感できる。